第9章 *Cultivate love*
§ 轟side §
ピーンポーン────……
インターホンを押して少ししてから開かれたドア。
そこから顔を覗かせたユイに俺の心臓の音が早くなった。
ユイはシンプルな白いオフショルダーの服に紺のワイドパンツを身に纏い、足元はヒールを履いているせいで、いつもよりユイの顔が近くに見える。
(ユイの私服を初めて見れたのが俺で良かった)
クラスの誰でもなく、俺である事に嬉しさを覚え、独占欲が満たされていく横でユイは強ばった表情を浮かべていた。
(緊張、してんだろうな)
つい昨日お母さんと会う約束なんてしたらそりゃあ心の準備もろくに出来ねぇか。
来週にする事だって出来たのだが、2人を早く会わせたかった。
「悪いな。今日クラスの奴らと出掛けたかったんじゃねぇか?」
出来るだけいつもの会話をしてユイの緊張をほぐそうとする。
「焦凍との約束の方が先だったし私も楽しみにしてたから全然大丈夫だよ。皆とはまた今度出掛けるから」
「そうか」
2人手を繋ぎ、世間話をしているうちにユイにもいつもの表情が戻り、緊張している素振りも見せなくなった。
(これなら大丈夫か)
そう思っていたのに………………
「ちょっと待って、やっぱり緊張する」
病室の前に立ったユイは会った時よりも緊張しているように見える。
病院に入ってからまた緊張し始めて、今ではこんなことになってしまった。
「大丈夫か?」
「よし……大丈夫」
ユイが一呼吸おいたのを確認してから、ユイの頭に手を置く。
「大丈夫だ。俺も隣にいるしお母さんも怒るような人じゃない」
「うん……」
3回ノックをしてから俺だけ先に部屋に入った。
「あら、焦凍。いらっしゃい」
「お母さん、合わせたい人がいるんだ。ちょっといいか?」
「いいわよ」
「ありがとう」
今まで俺が人を紹介した事なんて無かったので、お母さんは一瞬首をかしげたが、すぐに承諾してくれた。
俺は1度病室を出てから、外で待っていたユイと共に再び病室に入った。