第8章 *愛=嫉妬*
§ ユイSide §
幸せな朝とはこういう事の事を言うんだろう。
起きたら好きな人の寝顔があって、それをゆっくり眺めていられる。
隣で穏やかな寝息を立てて眠る私の恋人。
普段見るクールな表情とは違い、寝顔はどこか可愛くて焦凍も年相応の男の子なんだと実感する。
この前は私が寝顔を見られる側だったから、焦凍の寝顔を見るのは初めてだった。
(私…寝起き良いほうじゃないんだけどな…)
多分焦凍は疲れていたんだと思う。
一人だけ試験を二回受けて、二回作戦会議もして…それだけでも疲れているというのに私の我儘にも付き合わせてしまった。
「ユイ…?」
そっと焦凍のサラサラな髪を撫でると、紅白の頭がもぞもぞと動く。
「ごめんね、起こした?」
私の問いに答えることもせず、焦凍は二度寝の体制に入る。
「焦凍〜?起きて?」
時刻は七時前、そろそろ起きないと学校に遅刻してしまう。
「焦凍ってば……!」
なかなか起きない焦凍の頭を軽く叩くと、焦凍の手が私のうなじを引き寄せた。
「んっ……」
10秒ほどのキスの後、焦凍はやっと目を開けた。
「焦凍って寝起き悪い?」
「お前には言われたくねぇな」
「私は寝ぼけてキスなんてしない」
「寝ぼけてねぇ。わざとだ」
文章にするとハートマークの一つも無い会話だけれど、心の中は幸せで一杯だった。
「遅刻するから行くよ!」
側に投げ捨てられている衣服を着直し、急いで準備を済ませて焦凍の家を出た。
「そういえばお家の人、大丈夫?」
焦凍には兄弟もいると言っていた。
今更だが、こんなタイミング良く家に帰って来ないなんてそんな偶然あるのだろうか……と不意に思った。
「それなら問題ねぇ。親父は帰って来ねぇし姉さんには言っといた」
「言っといたって……?」
「彼女が家に泊まりに来るから今日だけ外泊して欲しいって言っといた」
「えっ…?!」
「クラスメイトじゃねぇんだから良いだろ」
「いや……あの…」
(急に泊まりに来て…しかもそのせいで自分が外泊になるって…私、第一印象最悪なんじゃ……)