第8章 *愛=嫉妬*
§ 轟side §
黙って隣を歩くユイの横顔は何を考えているか分からない。
だからこそ、急に抱きつかれてますます何を考えているか分からなくなった。
「うぉ……っ……」
ユイの体は地面から少しだけ浮く。
落とさないように腰に手を回して、飛びつかれた勢いそのままくるっと一回転する。
地面に着いた体は俺の体をきつく抱き締めた。
(ユイ?)
顔は俺の体に埋もれて全く見えない。
そして、また何も言わなくなってしまった。
試験が終わったら話すと言っていた話をしようとしているのか。それにしては話したくなさそうだ。
「今日、家来るか?」
俺が言えたのはこれくらい。
ユイは絶対に他の奴らがいる所でこんな態度は取らない。
だから、2人で居ることでユイが気を張らずにいれるなら少しでも長く一緒に居たい。
ユイの頭が縦に1度だけ動く。
「じゃあ行くか」
1度だけ頭を撫でて歩き出すと、軽く服を掴まれて、少し後ろからユイの声が聞こえた。
「ごめん…ありがとう」