第8章 *愛=嫉妬*
私は辺り一帯…自分よりも低い位置に冷気を巡らせた。
そして、セメントス先生だけは避けて全てを一気に凍結させる。
「これは…っ……!」
今まで全く動じなかったセメントス先生がここで初めて声を上げる。
それもそのはず。この展開を予想されていたら私達に勝ち目はないのだから驚いてくれなきゃ困る。
私は今、先生が作り上げようとしている壁を凍結で凍らせた。
(今だ!)
先生が動揺して地面から手が離れた瞬間に再び全速力で走って先生を追い越す。
「これで最後だ……っ!」
焦凍が声を上げたその刹那、突然現れた大氷壁によりセメントス先生と私達の空間は氷の壁によって完全に遮断された。焦凍が一瞬で大氷壁を作り上げたのだ。
もうこれでセメントス先生から私たちの姿は見えない。
個性の使いようが無くなった。
だが油断はまだできない。
建物の上から地上へと戻り、焦凍と並んでほんの少しの距離を走る。
5分ほど前まで隣にいたのに、離れていたのは戦っていた間だけなのに、隣にいてすぐに触れられるこの距離がなんだか懐かしかった。
「月城・轟チーム条件達成!」
私たちの試験終了を告げるアナウンスを聞いたと同時に安心して体から力が抜ける。
少しふらついた私を焦凍が支えてくれた。
「大丈夫か?」
もの凄く心配しながら私の顔を覗き込んでくる焦凍。
多分、私が今までに二回焦凍の前で倒れているからだろう。
「大丈夫…少し安心して気が抜けちゃっただけだから」
私だって個性を使えばいつでも死にそうになるわけじゃない。本当に身の危険を覚悟して限度以上の個性を出してしまった時だけ。ここ最近が異常すぎただけだ。
完全に二人の世界に入ろうとしていた時、ドカッ!!と大きな音がして、私と焦凍は我に返り、音がした方向を見る。
音の正体はセメントス先生が大氷壁を壊している音だった。
「素晴らしかったよ、おめでとう」
セメントス先生が拍手を送りながらこちらに向かって歩いてくる。
「きっと今頃切島くんと砂藤くんは悔しがっているよ」
「ありがとうございます」