第8章 *愛=嫉妬*
建物の上に移動した私と焦凍はそのままゲートを目指す。
だが、地面から生えてくる壁は建物の隙間をくぐり抜けてまたもや行く手を阻む。
(このままゴール出来れば…とか思ってたけどそんな上手くはいかないか)
次が最後の作戦。これが失敗すればもう手はない。
「焦凍!!」
私の右側にいる焦凍に合図をして私はありったけの力で目の前の壁を氷結で壊した。
────バキバキバキッ!
焦凍の方からも同じ音。
次に、氷で道を作り、その上を滑る。
焦凍と息を合わせないとセメントス先生にも勝てない。でも隣を気にしながら走ったらスピードが落ちる。
何も考えずに、ただ前にいるセメントス先生だけを見ながら自分の全速力で相手と息を合わせないといけない。
(あと少し……!)
セメントス先生を追い抜くまでもう少し。
ここまでさほど時間はかかっていない。先生は反応してはいるけど手はまだ地面についていない。
(もうすぐ……!)
ちょうど私とセメントス先生、焦凍が横並びになった時
ゴゴゴゴゴゴ…………
地鳴りのような音が鳴り響き、一瞬態勢を崩す。
セメントス先生が私たちの前に巨大な壁を作ろうとしていた。
地面から生えてくる壁は、私の所からセメントス先生をまたいで焦凍の所まで届くくらい大きな壁。
「……っ!」
このまま進めば壁にぶつかる。そう思い、体が勝手に急ブレーキをかけようとする。無意識に減速しようとしたその時
「ユイ!」
焦凍が私の名前を呼んだ。
やっぱり焦凍の声は何よりも早く、どんな事を考えていても私の耳に入ってくる。
そうだ。セメントス先生が壁を作ってくる可能性は常に考えていた。
思ってたより少し大きかっただけ。
全てがうまく行くなんて最初から思ってない。
セメントス先生が個性を使おうとした時に私がすることはたった一つだ。