第8章 *愛=嫉妬*
「峰田・瀬呂チーム演習試験レディ・ゴー!」
「そろそろ行くか」
「うん」
9戦目が始まったことを知らせるアナウンスを聞いて、俺達は試験会場へと向かう。
アナウンスは場外にも聞こえるため、一応試験の結果も把握できる。
俺らがここで作戦会議をしているうちに4チームの試験が終わった。
5戦目 青山・麗日チーム条件達成
6戦目 芦戸・上鳴チームタイムアップによりリタイア
7戦目 口田・耳郎チーム条件達成
8戦目 障子・葉隠チーム条件達成
「ハンデがあってもプロヒーローに勝てるなんて皆凄いよ」
「芦戸と上鳴も負けるような奴らじゃないと思ってたけどな」
「でも相手は校長先生でしょ?雄英の校長を務めるくらいだから実は誰よりも強かったりして…!」
「確かにそれもある」
二人で歩きながら他愛のない会話を交わす。
忙しい日々が続いていたからか、穏やかな時間はとても心地が良かった。
「一戦目で戦ってたのを見れたから作戦も立てやすかったな」
「それズルいかなと思って相澤先生に確認したら体育着での参加だからハンデとするって言ってた」
確かにヒーローコスチュームを着ているのと着ていないのでは全然違う。来ていなくても問題は無いが、着ていれば個性が使いやすくなる。
「ヒーローコスチューム、いつ出来るんだ?」
「もう申請はしてあるから林間合宿までには手元に届くって言ってた。それまでにヒーローネームも一応決めておかないとな…」
やることは山積みのはずなのに、ユイは楽しそうに言う。
実技試験場に着いた頃に、9戦目の終わりを告げるアナウンスが流れた。
「峰田・瀬呂チーム条件達成!」
「ミッドナイト先生に勝ったんだ……私も緊張してきた」
「落ち着け。作戦通りにやれば必ずどこかでチャンスは来る」
会場は切島・砂藤チームと同じ会場、つまりセメントス先生の得意分野。会場に入ると、そこには既に先生が待ち受けていた。
隣で息を吐くユイは、この試験に人生を掛けているような表情をしている。真剣にやるのは皆同じなのだが、ユイのは追い詰められたような感じの「真剣」だ。
気にはなるが、今は試験に集中しよう。
「月城・轟チーム演習試験レディ・ゴー!」
アナウンスが流れ、俺達の演習試験が始まった。