第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
「そういえば、あの女子達とはどうだったのだ?」
帰り道、東堂くんが切り出した。
「あ、そういえば」
「なんだ、忘れていたのか、、、」
東堂くんがククッと可笑しそうに笑う。
良かった。
東堂くんの笑顔を見ることができてホッとする。
あの時は東堂くんを守るために勢いで言ってしまったけれど、私は後悔していた。
だけど、大丈夫そうだ、、、。
東堂くんは強い人だもん。私が居なくなったところで試合に影響してしまうなんて、、、自惚れ過ぎもいいところだ。
「、、、で、何もされなかったか?」
「も、もちろん!そんな人達じゃなかったです、、、ただ」
「ただ?」
「、、、ただ、話を分かってもらえたかどうかは分からなくて、、、」
そう、私のお願いを聞くや否や、彼女達は無言で帰ってしまった。
もう応援に行くことはできない。
そういうことなんだろうか。
「話?」
「あっ、な、内容は秘密です、、、」
「何?」
目を丸くする東堂くん。
「ご、ごめん、なさい、、、」
だけど言えない。絶対に、、、。
「、、、そうか。友なのに、言えないことがあると、、、」
わざとらしく大きな溜息を吐く東堂くん。
「あっ、、、!」
私が驚くとニヤリと笑う。
その姿は、もういつもの東堂くんで。
「悲しい!俺は悲しいぞ!」
「あ、あの、、、これは、そ、そういうんじゃなくて」
「あー!俺は友だと思っていた!それなのに!!」
「も、もー!揶揄わないでくださいっ!!」
「はは!仕返しだ!」
東堂くんのおかげで、さっきまでの重たい空気は、汗を飛ばすように強く吹く風に乗って飛んでいったような、明るく楽しい時間。
夕陽を背に東堂くんが笑う。
眩しすぎて、目を逸らしたいくらいなのに。
“友“
自分から言った事なのに。
その言葉が東堂くんの口から出る度に、胸の奥が鈍く痛むのに。
私はこの空気の感触を、目の前に広がる景色を、彼の顔を、声を。
忘れないように全身に焼き付けてしまおう。
そう思った。