第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
高校最後の年、私は親の仕事の都合で、この箱根学園に転校してきた。
この学年で転校だなんて珍しいことだと思うけれど、これまでもそうやって色々な学校を転々としてきた。
けれも季節は、運良く(?)4月!
新しいクラスでの自己紹介!
頑張って大きな声で挨拶をして、今回こそは友達を!
って気合を入れていたのだけど。
「あ、あの、私は笹原美月です。、、、えと、その神奈川に来たのはこの前、、、」
バン!!
突然大きな音で開いた教室の扉に邪魔されて。
「ちわーす」
「こら!荒北!遅刻だぞ!新学年早々、遅れてくるとは何事だ!」
「すいやせーん」
「ったく、、、で?えっと、、、あ、そうそう笹原。続きを」
「、、、あ、あの、いえ。えと、よろしく、お願いします、、、」
私の挨拶は終わった。
「はぁ。」
他の人達の自己紹介を聞きながら、小さくため息を吐いた。
また、ダメだった、、、。
結果はこれまでと同じ。
「、、、」
高校最後の年くらい、皆と仲良くなりたいと思ったのにな。
思わず俯くと涙が出そうになって、、、
だっ、だめだめ!諦めたらだめ。まだこれからだ!!
そう無理矢理顔を上げた時、
「アッハッハッハ!待たせたな女子達よ!!」
「きゃー!」
「東堂くーん!!」
突然やけに明るい声と黄色い声援が聞こえた。
「俺の名前は東堂尽八!よぉーく覚えておくと良い、箱根の山神、天才クライマーである俺のことを!!」
声がする方向に目をやると、端整な顔立ちの男の子が、クラス全員の視線を一気に集めて。
「俺は今年インターハイに出る!この王者、箱根学園の名を背負って!」
大きな夢を語っていた。
その言動、その姿、彼を取り囲む景色その全てが衝撃的で、
キラキラと輝いて。
「楽しみにしておくのだ!!」
そう白い歯を見せて爽やかに笑った彼に、私の目は釘付けになった。