第1章 冷たい手【巻島裕介】
翌日。
「えぇ〜何それ!美月っ!それホントにドラマみたいじゃん!!」
昨日の出来事を陽子に話した。
「えへへ〜」
朝から私の顔は緩みっぱなしだ。
「このっ!浮かれ娘が!!腹立つわ〜」
そう言って何度陽子にお腹を突かれたことだろう。
「あーあ、こんなだったら私、巻島くん狙いでいけば良かったかな?」
「えー?」
こんなことを陽子に言われても今の私は余裕だ。
「ま、でもどっちにしろ巻島くんは無いわ。あんなに好きな子がバレバレな男、取りつく島もないもん」
「バレバレ?どこが?私、不安しか無かったんですけど」
「それは彼、あんたには見せないようにしてたもん」
「え?」
「あんたの見てないとこではすっごい嬉しそうな顔しちゃってさ」
「、、、」
「あんたが振り向いたりした途端、誤魔化したりして、、、!そのときの変な笑顔!面白いよねー!」
「、、、」
「だからずっと言ってたでしょ?あんただけに見せる笑顔なのよって!」
どうやら私が見てた彼の笑顔は誤魔化して変になってた笑顔だったようで、、、
「ってかそれって私だけに見せてない笑顔じゃん!!!」
「えぇ?そんな細かい事知らないわよ」
この友人がもう少し細かい事を気にする人間だったら、私はあんなに苦労しなかったんじゃないのだろうか?
そんなことを思ったことも、私はきっと一生忘れないだろう。
おわり