第1章 冷たい手【巻島裕介】
「ねーねー美月!今日もカッコいいよねぇ、金城くんは」
お昼のチャイムが鳴るなり、そう言って私の目の前でウットリと頬づえをつく、この美人は陽子(彼氏持ち)。
私の親友だ。
「陽子!ちょっと声大きい!金城くん、困ってるじゃない」
「いいのよ、本当の事なんだし!あっ!金城くーん!今日もイケメンだねー」
などと、チラリとこちらを伺う金城くんに恥ずかしげもなく手を振るほどの積極性の持ち主である。
あーあ、金城くん顔真っ赤。
「もう!やめてよ!恥ずかしい!!」
見ている私の方が赤くなる。
そんな私を見て陽子はニヤリと笑った。
「そんなこと言って、最近アンタはどうなのよ!未来の婿候補、巻島くんとは!」
「なんで裕介が婿なのよ!私と裕介はね、ただの、、、って痛っ!!」
勢いよく立ち上がった瞬間、太ももを机にぶつけた。
これがまた痛い。
私は思わずその場にうずくまった。
「えぇ!美月、大丈夫っ!?」
心配をして覗き込む陽子、、、ってちょっと、その顔は笑いを堪えてる顔だな!
悶絶しながらも陽子を睨んだ。
そんな私の肩に突然冷たいものが触れた。
「、、、何してるショ?」
「ひゃあっ!」
驚いて振り向くとそこには玉虫色の長い髪。
「って裕介かぁ、、、。おどかさないでよ」
「別に驚かせてないショ」
「アンタの手いつも冷たくて、触られるとビックリするのよ!っていつも言ってんじゃん」
「ハッ!それはすまなかったっショ」
そう言って私の幼馴染、巻島裕介は右手を上げて少し笑った。
陽子いわく、私だけに見せる笑顔、らしい。
これが笑顔?
と微妙に上がった左側の口角を見て私は思う。
「で、何の用なの?」
隣のクラスの裕介がわざわざ私に会いにくるのにはいつも何かしらの理由があった。
「あぁ。これ、忘れ物だからっておばさんに頼まれたショ」
そう言って裕介が出したのは私のお弁当?
「えっ!嘘!本当だ、入ってない!!」
私は焦って鞄の中を見て絶望した。
これから食べようと思っていた物がまさか入っていなかったなんて!
「全くちゃんと忘れ物ないかくらい確認してから家出るっショ、ホラ」
「あー裕介、ありがとうー」
泣きそうになりながらお弁当を受けとり裕介を見上げると、
んん?一体どこ見て?
っていうか何か汗かいてない?
不思議に思って裕介が見ているのとは反対方向に目をやると