【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第3章 レンズの向こうのその背中
「昨日のマヨナカテレビに映ったのって・・・」
言いにくそうに千枝が口を開く。
先日よりも鮮明に映る画面。
何より、色っぽいドレスを着てマイクを握った姿はどう見ても雪子にしか見えない。
―天城雪子―
町の中の一番の老舗、天城屋旅館の一人娘だ。
端麗な容姿に凛とした立ち姿。
艶やかな長い黒髪。
次期、天城屋旅館の女将。
この学校で注目したことの無い生徒は果たしていただろうか。
だが、彼女はあまり周囲と関わろうとせずに、古くから友達の千枝にいつもぴったりくっつき、その陰に隠れる様にしていた。
数人の果敢な男子生徒は雪子に近づこうとするも、番犬さながらの千枝に阻まれその願望を成就する事が叶わず。
それでも千枝の目をかいくぐり雪子に声を掛けた者もいた。
だが、本人にどんなに言葉を掛けてみても、そっけなく一言二言で断られてしまう。
そんな経緯で、発端は誰かはわからないがいつしか雪子という高嶺の花に挑戦する事を、彼女の苗字をもじって「天城越え」と名付けられていた。
当の雪子はそんな噂自体を耳にも留めないでいたが。
「天城、なんかすごかったよな・・・」
感嘆のため息とともに千枝に返事をする陽介もまた、かつて「天城越え」に失敗した一人だ。
彼の場合、調子半分だったのもあり、当の本人同士は特に気にはしていないようだ。
「ねぇ、雪子はあの中にいるんでしょ?助けに行かなきゃ・・・」