【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第13章 The Orange days
帰り道、確かりせちゃんが探りを入れて来たと思う。
千枝先輩は「ヘンな事されなかった!?」なんて若干ずれた心配をしてくれていたと思う。
天城先輩は、ぼーっとする私に向かって優しく扇子で風を送ってくれた、と思う。
そのどれもが曖昧なのは、私があまりに呆けていたから。
あの後、天城先輩の家に向かう途中、私の頭の中は先輩とのキスの事でいっぱいだった。
花火の打ちあがる境内の隅での密やかなファーストキス。
抱きしめられた感覚を思い出すだけでぼんやりとしてしまう。
今まで、テレビの中やちょっとしたハプニングで触れ合う事は何度かあった。
もっと際どく抱きかかえられた事もあるし、頭を撫でられた事だってあった。
もしかしたらテレビの中でパンツを見られた事もあるかもしれない。
だけどそれはどれも、恋愛関係故のボディタッチなんかじゃなくて、テレビの中での戦闘時や非日常故の緊急時の出来事ばかり。
思えば私を含め、花村先輩が女の子に直接的なちょっかいを出して来た事って無いかも。
改めて、先輩が軽そうに見えて慎重なのが判る。
付き合い始めて、今まで以上に花村先輩を意識してしまっている事に気が付いてしまった。
ようやく現実に返って来た辺りで、既に着替えを終えて帰路についている事に気が付いた。
(後で皆にメール、送っとかなきゃ心配かけちゃうよね・・・)
見慣れた家が視界に入って来た所で、家族に怪しまれないように呆けた顔を引き締める為に両手でばちんと頬を叩く。
一人恋焦がれる眠れない夜は終わったと思っていたのに、甘かった。
まだまだこれからが始まりだった。
―終―