【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第11章 その柵は自分次第
その夜、マヨナカテレビに映った少年は暗い瞳で画面の向こうに挑発するような言葉を残し、すぐにノイズにかき消された。
テレビに残された砂嵐もそこそこに、俺は鳴上に電話を掛けるが、鳴上も同じく心当たりがない様子だった。
少年の顔を思い出し、何処かで会ったかと思案を巡らせてみる。
一番可能性のあるのはジュネスだった。
フードコート、食品売り場。
バックヤードを除けばそこかしこに大勢の人がいる。
頻繁に足を運ぶお客の顔くらいなら何となく覚えてはいるが、郊外からも訪れるお客も多いので全てを思い出すのはとても不可能だ。
何処かで会ったような気もする。
だけど、それがいつなのかも、何処なのかも全く見当がつかない。
もやもやした気持ちを抱えながらベッドに転がると、いつの間にか眠ってしまったらしい。朝方早くに目を覚ますと、薄いタオルケットが俺の腹にそっと掛けられていた。
その小さな親切の犯人であると思われるクマは、クローゼットの向こうで意味不明な寝言を呟いている。どうやら夢の中で鳴上とプロレスをしているようだ。
クマはこっちの世界に来て以来、度々周囲を驚かせてはいるがそれなりに溶け込んでジュネスで働いている。
持ち前の明るさ素直さと見た目のお陰で世話を焼いてくれるパートの主婦の人達にきっと「親切」を教わったんだろう。
昨日の夜、風呂上りの楽しみに取って置いたホームランバーを食われてしまった事は不問にしよう。
そう思いながら俺は目覚ましが鳴る時間まで再び眠る事にした。