【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第9章 眠れない夜を退治しに行こう
日も暮れて来た頃に、俺達はジュネスを後にした。
睦月の家まで、二人並んで歩く。
歩みを進めると、不意に睦月の手に俺の手が触れる。
もう少しだけこの手を伸ばしたら、睦月は手を繋いでくれるだろうか。
背の低い睦月の表情が読めずに、結局俺の手は夏の空気に触れるばかりだ。
「ねぇ先輩」
「ん、何だ?」
「多分気のせいだとは思うんですけど、私、いつか先輩に送ってもらう約束、してた気がするんです」
「え・・・」
「それっていつだったのか全然覚えてないし、もしかしたら単に私の夢か何かかもしれない・・・うん、やっぱ、忘れてください」
もしかしてあの時、睦月には聞こえていたんだろうか、俺が一方的に取り付けたこの約束を。
・・・あれ、俺あの時うっかり色々言ったりして無ぇよな・・・?
頭の中で必死に思い起こそうとする。
「先輩、なんかぼーっとして、大丈夫ですか」
「あぁ悪ぃ、ちっと考え事。そうだ睦月、俺、まだ睦月の連絡先とか知らねーんだ。良かったらアドレスとか教えてくれねぇ?」
「そ、そうでした。えっと、今データ送信します」
携帯同士が互いの情報を受信する音が鳴る。
「夜中、寂しくなったらいつでも掛けて来ていいんだからな?」
冗談交じりに言いつつも、内心、半分以上は本気だった。
「先輩こそ、夜中にヘンなメールとかやめてくださいね?千枝先輩から色々聞いてるんですよ~?」
・・・里中・・・!なんつー余計な事を・・・!
「でも・・・」
「ん?」
「でも、何でも無い時にも先輩とメール、出来たら、嬉しい、です」
頬を赤く染めながら睦月は極上の笑みを浮かべる。
それが移ったかのように、俺の頬も温度が上がって行く。
「じゃあ、もう家そこなんで。送ってくれてありがとうございます、先輩!」
「お、おう!それじゃあまたな!」
小走りで家の中に帰って行く睦月。
その姿を遠目に追いながら、俺はメールをする口実を考え始めていた。
きっとまだ、眠れない夜が続きそうだ
終