【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第9章 眠れない夜を退治しに行こう
七月の半ば。
特出し劇場丸久座から脱出した後、期末試験の勉強に追われて慌ただしい日々が続く。
恥ずかしがる睦月を無視して抱きかかえて走ったあの日から、俺は眠れない夜を過ごしていた。
睦月が俺の指輪を肌身離さず持っていた理由。
俺の声で目を覚ましてくれた理由。
それ以前から、話しかけると嬉しそうにはにかんでいた笑顔を思い出す。
もしかして、俺のパーカーを夏になった今も身に着けている理由も。
日ごと気温が上がる季節。
にも関わらず、セーラー服の上から例のパーカーを羽織り、ファスナーの前を開けて腕を捲っている睦月。
校舎で見かけるその姿をつい思い出してしまう。
駄目だ、眠れねぇ。
考えれば考える程、気持ちが募って行く一方だ。
その割りには俺の導きだした予感に確信を持てないでいた。
睦月、お前は俺の事・・・
単なる勘違いである事は否定したくて必死で結論の尻尾を探し回るが、どうしても自信が持てない。
机の上の勉強用ノートには、公式の数よりも意味の無い落書きが増えて行く。
モヤモヤした気持ちを吹き飛ばそうと、開きっぱなしの教科書もそのままに、机から離れて大きく伸びをする。
カーテンを開いた先の夜空は、既に夏の模様をきらめかせている。