第2章 寮生活
『お茶子なら浮かせて運べるのにー』
「亜依ちゃんは軽いからええんよ。」
ゆっくり脱いでタオルを装備する。
このくらいの距離なら歩けそうかな…?
『うわっ…!?お茶子、恥ずかしいって!』
「2人しかいないんやから気にしなくていいの!」
立とうとした瞬間お茶子に持ち上げられ、湯船の中に入る。
やっぱり強引だなぁ…
「なんかあれやね、前まで男湯の方やったのにこっちに来たから違和感すごいわ」
『えっごめん、向こう行こうか?』
「いや、そういう意味じゃなくてさっ…これからは性別反転しなくていいよってことだよ。亜依ちゃんならできるよ!」
この間まで男子の方が力が強いからとか言って反転してたけどそれを一気に台無しにされた感じだ…
お茶子が言うならこのままでいいかな。
強くはならないとダメだけどね!
『お茶子って、好きな人いるの?』
今まで散々言われてきたことをたまには言ってもいいだろう。
「へっ?そ、それは…」
顔がりんごみたいに赤く染まる。
好きな人いるんだ…出久かな。
『無理して言わなくてもいいよ!いるってことが分かったし』
「いやいや、それは違…」
説得力ないなぁ、そんな顔で言われても。
『お茶子には幸せになって欲しいからさ。応援してるからね!』
早めにみんなに自分の想いを伝えとかないと。
いつころっとやられちゃうかわかったもんじゃない。
「ありがと!亜依ちゃんも…えっと…あっのぼせてきちゃった。そろそろ上がろうか!」
『う…?うん。』
またお茶子に担がれて浴室をあとにする。
これ車椅子とかの方が良くない?
毎度思うけどさ。
ーー
部屋まで送ってもらったあと、LINEの着信音が部屋にこだまする。
ーー優弥。
絶対に出てはいけない。絶対に関わりを持たない。
相澤先生と約束したんだ。
しばらくした後、背後から窓ガラスが割れる音が聞こえた。
「やぁ、迎えにきたよ。亜依。」