第2章 寮生活
『…個性?』
「そう。反転の個性。敵ってすごいんだぜ。ヒーローよりももっと世間のことに関して研究してるんだ。素晴らしいことだと思わないか?」
ふざけてる。ヒーローを馬鹿にするなんて。
『なに?ヒーローを侮辱してるの?』
「そんなことは言ってない。ただ、亜依の個性…まぁ本人の方がいいんだけどね。言う事聞かないからさー。」
その口ぶりだと、もしかして
『優弥って…敵連合?嘘だよね…』
「さすが頭いいね。そのまま理解してこっち側に来てよ。」
嫌だ。絶対に逃げなきゃ…
棘のせいで体が麻痺して動かないけど、足を引きずってでも出なくては。
『痛っ…!』
「大丈夫!?ごめん、やりすぎ…なんてね。」
駆け寄ってきた瞬間に首に棘を刺される。
あ…ダメだこれ。意識が…
ーーーーーー
目を覚ますと、棘が刺された部分は毒のように蝕まれていて。紫色に腫れ上がっている。
周りを見てもあいつはいない。
今なら這いつくばってでも出れる気がする。
『あれっ…開かな「なにしてんの。」』
まじ卍。
さっきからいないと思ってたら後ろにいたんですかー
こんなこと言ってる場合じゃない。
腕や足にも追加で何本か突き刺さっているし、
また意識を手放してしまったらここから出られない気がする。
必死であたりを見渡すと、出窓が空いているのに気づいた。
「どうする?このまま俺と二人きりか、…それとも」
『どっちもお断りだ!』
全身の痛みを我慢して出窓から体を投げ捨てる。
「馬鹿!ここ4階だぞッ!?」
地面が近くなっていく。このまま死んでしまうかもしれない。まぁそれでもいいけどさ。
せっかくのヒーローの卵なんだ。
ここで死ぬわけには…行かない!
服が木に引っかかったおかげで、落下は防げた。あとは逃げるだけ。
カフェを通り過ぎて中華街へ走っている途中、敵が暴れていた。
全身が悲鳴をあげている。
どうしよう…動けない。
「危ない!」
あー、情けない最後だったな。
せめてみんなにありがとうくらい言いたかったのに
「おいっ。大丈夫か!わりぃ。こんな路地裏で」
聞いたことのある声に目を開けると
目の前にいたのは焦凍だった