第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
「はぁっ?!愛聖と同居?!」
新しく撮り出すドラマと連携した番組の打ち合わせで、監督たちから提案された事に思わず叫ぶ。
「面白そうだろう?これから撮るドラマは高校教師である楽くんと、教え子でもある幼妻の佐伯さんの秘密の新婚生活をメインにした話だし、ドラマと同じセットを組んだ部屋で、期間限定とは言え生活を共にすれば・・・自然といい演技が出来るんじゃないかね?」
自然な演技って言われても、俺の本職は俳優業じゃねぇよ!
そりゃあ・・・まぁ、そこらの新人俳優たちには負けない演技の幅はあるとは思うけどな。
かと言って、いくらドラマと連携したバラエティ番組の企画だからって、そうは言ってもだな・・・有り得ねぇだろ?!
「ちなみにバラエティチームの方はドラマとは違う角度からの君たちを撮るけど、その辺は普段の君たちの素顔を見せちゃってくれていいからね?」
『私は・・・監督がそう仰るなら・・・』
「は?!お、お前なに言ってんだよ!そんなのお前んとこの社長が承諾するわけねぇだろ!」
な!ちょっと考え直せ?!と詰めよれば、愛聖は困った顔をしつつも笑顔を崩さない。
『私も戸惑ってはいるけど・・・ほら見て?うちの社長がああいう顔をしてる時は、OKってことなんだよ、ね。それに私のことは心配しなくて大丈夫だよ?普段からアイドリッシュセブンのみんなと寮生活してるから、楽と一定期間の同居生活くらいなんともないし』
言われた通りに小鳥遊社長を見れば、それはもう仏のように穏やかな微笑みを浮かべていて・・・
「それじゃ、ドラマ班とバラエティ班のチームワークを活かしながら準備に入ろう」
ノリノリな監督やスタッフたちの意気込みに負けて、渋々・・・承諾をする事になった。
誰か・・・誰か冗談だと言ってくれ・・・コイツと2人だけでの生活だとか、心臓が持たねぇよ・・・
心の中で呟いた言葉が誰に届くでもなく、姉鷺が親父にいとも簡単に承諾を取ったせいで・・・企画はスタートする事になった。