第1章 秘密のキスはアナタと ( 大神万理 ・2018生誕 )
❁❁❁ epilogue ❁❁❁
「愛聖、そろそろ出ないと」
『あ、ちょっと待って』
今日は紡さんも社長も予定があって、現場に出る愛聖の同行をする事になって寮まで迎えに来てみれば。
朝寝坊したという愛聖がバタバタと支度をしていて、出発時間まであと5分というギリギリタイム。
「佐伯 愛聖。この業界は時間厳守が鉄則だと教えた筈だ」
『は、はいっ!···ちょっと万理!いい加減八乙女社長の真似するのやめてよ!心臓止まる!』
前に所属していた事務所の社長の真似をして言えば、シャキッと背筋が伸びる愛聖を見れるのが楽しくて。
時間が押してる時には、時々それを真似してしまう。
「今日は千達とのCM撮りだろ?俺がいるってだけで千はやたらと絡んで来るんだから、その時間も考えて先に現場入りしないと」
『分かってるって。千も百ちゃんも、万理がいたら私の楽屋にずーっといるんだもんね』
「そうそう。自分達の楽屋で過ごせばいいのに」
『でも。そう言いながらも万理だって千や百ちゃんと楽しそうじゃん。なんだかんだ言っても、万理はあの2人が好きなんだから』
髪を束ねながら鏡越しに俺を見て笑うけど。
ねぇ愛聖、知ってる?
俺の1番は、昔も今も···愛聖だって事。
それに今日のRe:valeとのCM撮影は、新作カラーの口紅。
商品が口紅ってだけあって、愛聖は千とも百くんとも···結構な至近距離での、なんだよな。
事前に渡された絵コンテの流れを見ても、相手が千達じゃなくても···ちょっと妬ける。
『支度出来た!急ごう万理···遅刻する!』
「はいはい···じゃ、急ぎますか」
ほら、と手を伸ばせば、前とは違って躊躇いなく繋がれる愛聖の手。
『危ないから、でしょ?』
「そうだね···車まで走るから、転ぶなよ?」
そう言ってバタバタと慌ただしく部屋を飛び出した。
しっかりと、手を繋いだまま···
『あ、忘れ物!万理、ちょっと止まって!』
クイッと手を引かれ足を止めれば、不意打ちに触れてくる愛聖の唇。
『おはようのキス、まだだったから』
やられた···
そんな俺達の関係も···いまはまだ、秘密。
~ END ~