第10章 甘さはなくても・・・(2020.2.14 八乙女楽 )
~ bonus episode ② 八乙女宗助 ~
「どういうつもりだ、小鳥遊」
突如送られて来た画像を見ながら、送り主に電話を掛ける。
小 ー どういうつもりも何もないよ?ただ僕は愛聖さんから送られて来た写メをキミにも届けただけだよ。2人とも可愛いじゃないか ー
クスクスと笑いながら話す小鳥遊の顔が浮かび、苛立ちが沸き起こる。
「楽は男だ。そんな物は必要ない」
小 ー あれ?楽くんはそうでも、彼女の事が可愛いって所は認めちゃう感じ? ー
「・・・黙れ」
小 ー さっき出先でTRIGGERのマネージャーに会って、愛聖さんからキミへの贈り物を預けてあるから受け取って?じゃ、僕はこれから愛聖さんの売り込みに行かなきゃだから、失礼するよ? ー
そう言った後に通話が終わり、それと入れ替わるように姉鷺が私の部屋のドアを叩く。
姉「失礼します。社長、所用で出ていた先で小鳥遊社長からお預かりした物をお持ちしました」
コトン、と私の机に姉鷺が小さな箱を置く。
姉「愛聖から社長に、バレンタインのプレゼントだそうですよ?本来ならば愛聖が手渡したかった様ですが、撮影の為の楽との共同生活があるから時間が取れなくて・・・と向こうの社長さんから伺いました。あら・・・これはいったい?」
画像を開いたままのスマホに視線を落とした姉鷺が目を丸くする。
「小鳥遊が送り付けて来た物だ。相変わらず行動が読めないヤツだ」
姉「撮影衣装の中にこんなのあったかしら?なんだか2人とも楽しそうですね。でも、なんでしょう・・・新婚役で言うよりも、どこか仲の良い兄妹のような雰囲気もありますね」
「っ・・・そんな事はどうでもいい!下がれ姉鷺」
秘密裏にしている事を肯定する訳にも行かず、姉鷺を即座に部屋から出す。
愛聖の・・・正規の戸籍上の父親は別の人間だが・・・実際は・・・
大きく息を吐きながら小箱のリボンを解けば、中には手作りと見える小さなマカロンが並べられ、誘われるままに1つを口に入れる。
「甘い・・・こんな物を作って私に寄越すなど、小鳥遊のスケジュール管理はそれ以上に甘い様だな」
そう言いながらも、口の中にふわりと広がる甘さと同じく、穏やかな気持ちが胸に広がって行った。
〜 END 〜