第10章 少女の変化
「歩きにくい」
「せっかく肩を貸してんのに、そういう事言っちゃう!?」
「要らない、1人で歩ける」
普段通りの流衣に、相澤は安心していた。
USJ事件の翌日、漸く目が覚めた相澤は、包帯姿のまま、病院をあとにしていた。
目が覚めると、当然のように隣には流衣がいて、マイクを電話で呼んでくれたのだ。
何となくだが、自分が意識を失っている間、流衣はずっと傍にいてくれていたのだなと思った。
──さすがに制服姿だったのには驚いたが。
意識はなかったが、怪我を負った自分にかなりの心配をかけさせたのはわかっている。
自分より肩が低いのに、貸して一緒に歩こうとしているその姿勢は何とも愛らしいが、如何せん歩きづらい。
なぜマイクでなくて流衣が来たのだと思うが、そもそも1人で歩けるし、それに──あの友人は恐らく、こちらに気を遣ってくれたのだろう。
普段は煩いくせに、こんな時は静かに見守ってくれる友人に、相澤は心の中で感謝した。