第5章 意識の違い
いつからだったのだろう。
何がきっかけで、この気持ちを抱くに至っただろうか。
相澤にとってはあまりに自然な想い故、全てが分からなかった。
──俺らしくもない。
家族にこんな感情を抱くなんて、どう考えても合理性に欠く。
それが生徒であるなら尚更だ。
仕事の合間合間に彼女の授業の様子だったり、交友関係だったりを他の先生に尋ねてしまうくらいには気にかけてしまう。
普段なら、時間の無駄と割り切る事ができたはずなのだけれど。
相手が流衣であるというだけで、こんなにも上手くいかない。
「…ごめん」
──俺を、信頼しているからこその無防備なんだよな。
それを、裏切る形になっちゃってごめんね。
心の中で呟いてから、相澤は流衣を抱きかかえ、そのまま彼女の部屋まで運んだ。
頬に口付けを落としてから、相澤は自室に戻っていった。
流衣はまだ、目を覚ます様子はない。