第29章 教師と生徒
「えっと………」
緑谷の背中にあるのは床。
お腹側に当たるのは、流衣の──
つまり、馬乗りにされていた。
ぽた、ぽた、と緑谷の顔には冷たい雫が落ちる。
緑谷の顔に浮かぶのは、戸惑い。
男女の関係のようなドキドキを、感じられるはずがなかった。
──なんで、泣いてるんだろう…
何を訊いても答えないし、流衣はただただ、涙を零すだけ。
緑谷は、どうしていいか分からなかった。
どのくらい時間が経っただろうか。
暫くして、漸く口を開いた。
「ねぇ、緑谷……」
「う、うん、何、?」
──とりあえず、そこをどいて欲しいんだけど…
自分の上に何が乗っているのかを考えないように努力しつつも、緑谷は安心させるように微笑みかける。
もっとも、それはかなり引きつったものだったのだが。
そして、
「………………………抱いて」
この言葉で、更なる引き攣りを浮かべる。