第28章 気付く時
「消太だけには甘えるし、何なら声も全然違うぜ?今度録音でもするか?」
「な、なっ…!?」
ボン、と頬の熱で顔が爆発しそうだ。
そんなに判りやすかったのだろうか。
無自覚であったために、その自分の態度が恐ろしい。
──気持ち悪くなかったかな。
相澤は無駄な事が嫌いだ。
だから、無駄に甘えてくる自分が煩わしくはなかっただろうか。
うざったく思わなかっただろうか。
不安だけが募る。
──どうしよう、嫌われたら。
──消太だけには、………
ぼろぼろと、雫が溢れる。
マイクはギョッとした。
「お、おい!?録音なんてジョークだぜ判ってるか!?」
「ちが、違う…しょ………たに、きら…たくっ、ない…」
──嫌だ、嫌だ。
頭の中には「嫌だ」しか言葉が巡らず、まともなことを考えられない。
ぐるぐる、ぐるぐる。
「いやだ」が回る。
ひっくひっく、としゃくりあげると、マイクは背中を摩って宥めた。
「落ち着け、大丈夫だから。
お前は嫌われてたりしねぇよ」
「……っんで、そんな、」
「言いきれるだろ。
あいつは合理的且つ面倒は省く男だろ?
自ら嫌いな奴の世話なんてすると思うか?俺と仲良いんだから、嫌な奴なら俺にでも預けるだろ」
な?と、優しく微笑むマイク。
その瞳が浮かべる色に、流衣は気付かない。
マイクの言葉がとにかく嬉しく、そして救われた流衣は。
泣き笑いのような表情を浮かべて。
ありがとう、と抱き着いた。
それが彼にとって、どんな苦痛になるかも知らずに。