第27章 ヒーローになるために
爆豪をとりかえしに行くのだと言ったとき、彼女は馬鹿馬鹿しいと吐き捨てた。
流衣はそれ程までに冷酷だったろうか。
苛立っているように見えたけれど。
何が彼女を苛立たせたのだろうか?
合宿を通じて、爆豪との仲は改善に向かっていた気がする。
だから、取り返そうという提案自体に苛立っていたわけではなさそうだ。
少し気になって、取り返した翌日にメールを送ってみたのだが、返信は返ってこなかった。
何かあったのだろうか。
──でも、このタイミングで?
それに、何かがあって学校に来れていないのなら、相澤がそれについて言及するはず。
それに、相澤はいつも、クラス全体に話をするとき、最後に最後列──流衣の方をちらりと見る癖がある。
しかし、今回はそれをしなかった。
つまり、相澤は今日流衣の不在を知っていたということにならないだろうか?
という事は、流衣が欠席しているのは「何かがあった」のではなく、事前に予定があった──「何かがある」という事なのではないだろうか。
──このタイミングで、何がある…?
偶然という可能性もある。
だが、必然性を感じざるを得ない。
そしてそれを、生徒たちに教えない理由は何だろう?
飯田をちらっと見ると、彼も気付いていたようだ。
「先生!時暮くんは、どうしたのでしょうか?」
「…近いうちに話す。
今は話せない」
一拍おいて放たれた言葉には。
さらりと流すことができないほどの重みが含まれていて。
クラスの空気が身構えるのには、充分だった。