第26章 少女はヒーロー
一方その頃、相澤宅では──
「やれやれだな、流衣は…」
あいつは根っからのヒーロー気質だ。
"助けてもらえない者の苦しみ"を知っているからなのか、彼女はそういったことに関しては、ものすごく鋭く反応を示す。
それがいい事なのか悪いことなのか、まだ判らないけれど。
これから彼女は、自分の抱える事情について、話さなければならないのだろう。
それが本人の口からと義務づけられているのでないことには少し安心したが、まぁこれについては相澤が上手くやるだろう。
過保護なやっぱりのことだ、間違いなく彼が済ませてしまう。
──んなことばっかしてっと、独り立ちできねぇよ流衣は…
──って、このままでいいのか。
変に納得してしまった。
流衣がいなくなったことで手持ち無沙汰になってしまったマイクは、こっそりと同僚の自室にお邪魔する。
流衣の部屋に入るのはさすがに犯罪臭がするし申し訳ないし、と妙な自制心が働いたからなのだが。
もっとも、ここでマイクが勇気(?)を出せる人間だったのであれば────相澤の場所に、今は彼が居座っていて、彼女を抱きしめることができていたかもしれないのだが。