第4章 ヒーロー基礎学
「戦闘服に着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」
オールマイトの言葉に、皆それぞれ嬉しそうな反応を示しているのに対し──流衣だけが、ぼうっとしていた。
「…?おい、話聞いてたか?」
後ろに座る男子生徒が話しかけると、流衣はくるりと振り返った。
「なんて?」
「戦闘服に着替えろって言ってたぞ」
「いや、違くて…名前、なんていうの?」
自分の話を聞いていなかったのだろうか。
複雑な気持ちになるも、彼は律儀に答えた。
「轟焦凍だ。呼び捨てでいい。…お前は」
「私は時暮流衣。よろしく」
無表情のまま流衣は言った。
無表情なのは本来の気質なのだろうか。
先日も無表情を貫いていた気がする。
冷たい印象は受けず、ただ、最低限の事しか話さないようにしている──そんな印象を受けた。
既に何人かは周囲の席の人たちと話し、友人を作り始めているというのに、彼女は自分の殻に閉じこもっているかのようだ。