第23章 林間合宿──少女の微笑み
林間合宿が始まった。
生徒たちは今、バスに乗り込んだところだ。
「お茶子ちゃん、一緒に座らない?」
「うん!座る座るー!」
「オレ、まーどぎわ!」
「ちょっと誰だよ、荷物邪魔ー」
わいわい、と席につきながら盛り上がる生徒たち。
緑谷は飯田の隣に座り、それからようやく、流衣が1人で所在なさげにしているのに気付いた。
「あッ…時暮さん、席……」
流衣に友人はいない。
少なくとも、自分以外には。
否、いるのかもしれないが、親しくしている姿は見たことがなかった。
緑谷が気遣う様子を見せると、流衣はへらりと笑った。
「大丈夫、私、先生の隣に座るし」
でも、その笑みは全く笑っているようには見えなくて。
何と声を掛けるべきか迷っているうちに、
「どこでもいいからさっさと座れ」
席はそれで決定してしまった。
「時暮さん、」
緑谷はいたたまれなくなって声を掛けようとするが、既に流衣は席に着いていて、相澤に座れと睨まれるだけだった。