第3章 男と少女
何かあるのではと、異性と出掛けた話を聞く度に勘繰ってしまう自分が好きになれなかった。
そして、彼女は──子供扱いするのが不当なくらいには、実力も知識も、地位も──全て持っている。
──やめだ。今日からはあいつも生徒なんだ、変な気を起こすのは良くない。
流衣は、自分たちヒーローにとって特別な存在だ。
味方としては強力だが、若く、信念を持たない故に、いつ敵に転じるか分からない──敵に利用されるか、分からない。
だからこそ彼女を引き取ったのであり、彼女の周りにはヒーローで溢れているのだろう。
警戒されているのだ。
相澤としては、流衣にヒーローになる気持ちは無いかもしれないが、敵になる事はないと思っている。
雄英に来たのは想定外だったが、"事情"を知る人間が多い方が安心だと思ったからだろう。
長年の付き合いからわかることだ。
周囲に迷惑をかけてしまうこと、そればかりを恐れている。
事情が事情だから、仕方ない気もするのだけれど──彼女を、守りたいという気持ち。
それが家族としての情なのか、ヒーローとしての性なのか、はたまた別の感情故か──相澤は、気付かない振りをしていた。