第21章 過保護と努力
そういえば、今までに彼が受け持ったクラスの中で、この時期まで誰も脱落せずに保っているのは初めてのはずだ。
それもあってか相当嬉しいのかもしれない。
しかし、流衣と相澤の目が合った瞬間、相澤は無表情に戻った。
「…だが、全部嘘ってわけじゃない。赤点には補習時間を設けてあるからな」
──バレバレだし。
隠そうとしていたのが明らかで、年上のあの男を、ちょっぴり可愛いと思ってしまう。
にやにやとしていると、どうやらHRは終わったらしい。
葉隠の提案により、クラス全員で買い物に行こうという話になったようだ。
流衣はその会話の中には入らず、帰ろうとしていると緑谷に声を掛けられた。
「時暮さんも行く?」
──え、良いのかな。
しかし喜んだものの、一瞬で教室の空気が固まったのが分かった。
皆顔には出さないように努めているが、それでも分かる。
──そりゃそうだ。浮いてる私が行っても、和を乱すだけだもんね。
それでも尚、自分を誘ってくる緑谷は凄いと思いつつ、首を横に振った。
「私はいいや。緑谷、ありがとうね」