第20章 期末テスト
現に、流衣は焦った表情をしているものの、相澤からは充分すぎる距離を保ちつつも確実にゴールに近づいていっている。
屋根から屋根に飛び移り、電線を伝って飛び降り──素早い動きで、相澤を翻弄していた。
勿論、重さのハンデがある。
けれどそれにしたって、相澤は流衣を追いかけるので精一杯に見えた。
──やっぱりおかしい。こいつらは気付いていないのか…?
しかし、轟はそんな中、自分の中の確信を確証へと変化させていた。
流衣が無個性であるのなら、相澤と組ませる理由がないのだ。
確かに、他の教師たち──オールマイトやプレゼント・マイクなど、彼らの相手は厳しいだろう。
だが、それならスナイプや根津など、無個性であっても大丈夫そうな──教師を相手させるのが妥当なのではないのだろうか?
何せ、流衣と相澤を組ませるメリットが分からない。
相澤の個性が無意味になってしまうのだ。
本当に無個性だったとしても、教師側が「無個性」になる意味がないのだ。
現実、敵は何らかの個性を持つ事が殆どなのだから。
やはり、と先日見た記事を思い出し──…そしてそれが、底知れぬ不気味さへと変貌を遂げる。