第3章 男と少女
「ひざしくんの所に行ってた。前から約束してて…今日言うつもりだったんだけど、忘れてた。ごめんね」
「いや、いい。次は直せ。…今日俺が起きて待ってたのは、お前に話があるからだ。分かるな?」
隣のスペースをトントンと軽く叩き、座るよう促す。
流衣は素直にそこに座り、うん、と頷いた。
「個性把握テストの件だよね?」
「そうだ。…"無個性として"通すという判断は正しかった。これからもそうしてくれ。授業や行事は、俺たち教師で話し合ってどうにかする」
分かった、と流衣は頷いた。
自分がどうすれば最善なのか。
どう行動すると、世間がどう動くのか。
他のヒーローに、どんな迷惑がかかるのか。
全て考えた上での決断なのだろう、相澤の言葉を断る理由など存在しない。
──本当は、…
自分が雄英に通う理由などない。
強いていうなら、顔見知りが多いと安心するからという理由だけだ。
だが、それも正解だったように思う。