第3章 男と少女
夕食を終えた相澤は、家具の少ないリビングでじっと時計を見ていた。
──遅い。
同居人を待っているのだ。
未婚で恋人もいないが、ある事情から、彼はある子供を引き取っていた。
しかし、その"子供"が今日は帰ってこない。
外出しても遅く帰ることのないよう言い聞かせている相澤にとって、それは良い事ではなかった。
じぃっと待ち続けて、時刻は24時を回る。
"子供"の身こそ心配していないものの、しかしそれにしても遅すぎる──と思ったところで、玄関のドアが開く音がした。
「ただいまー」
聞きなれた、且つ待っていたその声に、相澤は溜息を吐いた。
「…遅い」
リビングに入ってきたその"子供"──時暮流衣を見て、相澤は低く言った。
流衣はゴメンネと笑う。
悪びれていない様子だから、全く反省していないのだろう。
どこで育て方を間違えたのかと思うも、──あまりまともに教育した記憶がない。
自分のせいか、と少し反省する。