第17章 「事件」
マスコミは何も嗅ぎつけなかったのだろうか?
国は何も言及しなかったのだろうか?
警察は?
──『不可解な事故として──…』
不可解な事故?
幼児や赤子など、個性を扱えない幼子が人を傷つけてしまったという事実は、秘匿するべきものなのだろうか?
次に備えるために、世間に広めて打開策を考案する必要性があるのではないだろうか?
なぜ、隠す?
この時点で、轟の中では「時暮が、個性を持った人間である事」は、疑いようのない事実になっていた。
そして、──流衣がなぜ、クラスメイトとの会話を避けているのかという理由にも──これが関係するのではないかと、直感的に思う。
メディアが隠蔽するくらいだ、同級生にも隠したいと思うのは普通の事なのだろう。
訊かれては困るから、距離を置く。
そう考えるのは自然なことと思える。