第12章 友達、そして覚悟
休み時間に入って1番、珍しく流衣は「寝る」以外の事をしていた。
緑谷の席まで行き、彼に話しかけていたのだ。
「…って訳で、空いてる日を教えてくれないかな」
パン!と流衣が顔の前で手を合わせた。
クラスでは滅多に口を開かないため、クラスメイトたちは何事だと遠巻きに2人を見守っていた。
先程の相澤の件といい、今日は少しだけ、饒舌になっているようだとクラスメイトたちは思う。
「いやごめん、……何が『そういう訳で』、なの?」
唐突なお願いに、戸惑う緑谷。
クラスメイトたちからの視線には当然のことながら気付いているが、流衣に気にする様子はない。
「まあそんな事はどうでもいいじゃん。ヒーローの話を聞きたくて」
「………えっ!?」
緑谷の声が弾んだ。
それもその筈。
ヒーローには特に興味がある訳ではない流衣から、そんな言葉が出てくるなど、夢にも思わなかったのだから。
ヒーローに興味をもってくれ、更に自分に話を聞きたいと言ってくれるのは、緑谷にとって喜ぶべき事だった。