休載P4A 【 My happy definition】
第2章 梅の花が咲く頃 (まだ彼がくる前の話)
「ふーっ、こんなものかな」
ほとんど物置部屋に近い状態だった事実の向かいの部屋。窓を拭いた雑巾はだいぶ黒くなっている。あとは掃除機をかければ、この部屋の掃除は完了だ。
鳴上悠という従兄弟が1年ほどこの家で過ごすことになる。とっつきにくい性格の人ではないといいな、と願いながら掃除機のコンセントを差し込み、ブブブとうるさい音を立てて埃を吸い込んでいく。
「陽介のとこで新しい掃除機見てこようかなぁ。お友達価格で少し安くしてくれればいいのに」
そんなに広くはない部屋なので、あっという間に片付いてしまった。1日掃除をしていて、だいぶ自身のテンションも上がっているので、勢いのまま今日の晩御飯も作ってしまおうと、最後にテレビのプラグだけ差し込み部屋を後にした。
「おねーちゃん!!!菜々子も手伝う!!」
「ありがとう、助かるよ菜々子〜」
エプロンを身につけていると、後ろから小さい温もりが飛びついてきた。菜々子も!とお揃いのエプロンをつけて台所に並ぶ。
菜々子もだいぶ料理ができるようになった、というより家事全般が同年代の子たちよりも完璧にこなせるくらいだろうと思う。私が頼りないからかな、と思う反面に菜々子の存在はとても心強い。
「じゃあ、今日はお味噌汁の具財を切ってもらおうかな」
「うん!
あ、でも、にんじんとだいこんの皮は、お姉ちゃんがとってね?菜々子、むずかしいの」
「うん、そのあとは菜々子に頼んだ!」
私が皮を剥いているのをじっと菜々子が見つめている。こんな時間がずっと続いてればいいのに、続けさせていきたいと思う。
鳴上くん、どんな人なんだろう。
菜々子の様子を見つつも、眠るまで鳴上悠がどんな人物なのかがずっと頭から離れなかった。