休載P4A 【 My happy definition】
第6章 不良くん(アニメの5話)
つけっぱなしになっていたテレビ。洗い物をしつつ何となく聞いていた。たびたび悠くんが使っているシャワーの音が響く。
『10年程前のあの犯罪者、更生施設をついに出ました』
パリンッ
手にしていたコップが床に落ちていた。
『あの夜桜ですよね??』
『はい、あの夜桜です。
当時はだいぶ話題になりましたからね、覚えている人もだいぶ多いのではないでしょうか』
『たしか、生き残った子供もいて、きっと今では大きく成長しているでしょうね』
『では、忘れている人も多いでしょうから、こちらで簡単に振り返ってみましょう』
心臓がドクンドクンうなっている。
止まらない。
ドクンドクン
この音しかもう聞こえていなかった。
「ルナさんっ!??」
気づけばリモコンを握り、ソファーに座っていた。
「大丈夫か???」
悠くんだ。
テレビの電源は無意識のうちに消していたのかもしれない。
『痛っ』
足の裏にピリッとした痛みが走った。見てみるとガラスの破片が刺さっていた。
「今、救急箱をとってくるから、そのまま動かないで」
悠くんは、知っているのだろうか。
私があの夜桜の娘だと。
―――知っているのだろうか。
偶然にもガラスの破片は傷口の中へと入り切っておらず、悠くんがピンセットを使い取ってくれた。器用だ。
「俺、残りの洗い物やるから、もう部屋で休んで」
「う、うん、ありがとう」
心配そうにこちらをうかがってはいるものの、深く聞いてこないところに彼の親切さが感じる。本当に助かる。
またドキドキと心臓がうるさくなってきた。携帯が着信音を鳴らしているが、そんなのを気にしている余裕ないままいつの間にか眠っていた。
ひどく疲れる夢を見た。