第3章 ガラス細工
落ち着いてから、温かいペットボトルのお茶を渡し、それをゆっくり飲んでいる。
まだ指先は震えているようだった。
「何があったんだ?」
「わ、忘れ物したって、言われて……」
「そうか」
一人で判断して勝手に行ったにも腹が立った。
何故一言相談してくれなかったのだろう。
「言えば、一緒に行った。
もし1人になって過呼吸になっていたらどうするんだ?」
「…っ!!ひっ…ごめん…なさっ……」
言い過ぎた。
心配してのことだったのに、逆効果だった。
今言うべきてはないことだ。
ますます非力な自分に腹が立つ。
「すまん」
落ち着かせようと背中を少し撫でた。
小さい。
そして薄い。
今にも壊れそうな、繊細なガラス細工に思える。
少しでも力を入れたら、簡単に壊れてしまいそうだ。
好意、執着、興味、それ以外の言葉の感情。
(庇護欲…)
触れてしまった自分の手がじんじんと熱い。
これ以上ここにいるのは、まずい、確信もないがそんなことを考えてしまう。
もう1人の自分は、このガラス細工を壊してしまいたくなっている。
それはあってはならないことだと言い聞かせる。
「家まで送る」
「…うん」
まだフラフラな足をゆっくりと動かした。
鞄を持ってやると、遠慮がちに感謝の言葉を言い、道案内をしてくれる。