第2章 合わない目線
部活の終わりに、天童に最近の俺の行動について声を掛けられた。
「彼女出来た?」
「や、あれは、側にいたいだけだ」
「は?付き合ってないの?」
「そうだ」
「好きなんでしょ?」
「好き?」
やっと昨夜読み終わった恋愛小説で、それがどういう気持ちなのか説明されている描写があった。
見ていたい。
声が聞きたい。
段階を得て、触れたい。
春の日溜まりのようなそれを、見ていたくて。
声が聞きたくて声を掛け。
そして、手を……。
そこまで考えて、漸く思い当たったことがひとつある。
彼女を見ていると、たまに声が聞こえなくなる。
見ることに集中してしまう。
声が聞きたいと集中していると、段々顔が見られなくなる。
たまに燃えるように熱い。
それはまさしく。
「ああ、好きだ」
俺がこういう感情を持つことが不思議なのだろうか。
更衣室にいたメンバーが固まった。
それは、執着や興味ではなく、ただの恋慕だった。