第2章 合わない目線
彼女と過ごすようになって数日、やっと少しずつ自分の話をしてくれるようになった。
それでもたどたどしく、消え入りそうな声で、俺はその話に集中力を注いで聞いた。
「、次は科学室だ」
「そうなんだ……」
友達がいない彼女にとって、学校の情報源は全て俺だった。
どこで何をするか、いち早く教え、そして、緊張させないよう気を付けているつもりではいた。
何より自分がそうしたかった。
「…牛島くん、バレー部の、すごい人なんだってね?」
「打ち込んでいるだけだ」
「そうなの…?」
「ああ。お前にはないのか、夢中なこと」
残念ながら今の俺は不誠実だ。
部活、そして目の前の少女の二足のわらじとなってしまった。
少し前の自分なら叱りつけていたところだが、どうにも居心地が良い。
「本、くらいかな…」
は丁寧な箸使いで、丁寧に作られた弁当を食べる。
「本というのは、あの恋愛小説か?」
「…!!は、恥ずかしい……」
見とれるくらい、彼女の表情が変わる。
真っ白な肌は赤く染まり、嬉しそうな困ったような顔をする。
「なかなか面白かった。
しかし、俺にはいまいち感情が理解できないところが数ヶ所あった。
他の女に目移りするシーン、あれはあまりに不誠実だ。
人間なら一度決めたことにきちんと向き合うべきだと思わないか」
と、言ったものの、その言葉は自分に戻ってくる。
「……そういう考え方出来るって、すごいね?」
「何故だ、普通だと思ってきたが…」
「みんな、牛島くんみたいな考え方だったらよかったのに……」
彼女はつらそうな顔をして、やはり目線を合わせてはくれなかった。