第9章 白露に吹きし風
「んん、ん…ぅ、はっ……」
相変わらず慣れないのか、息苦しそうに酸素を求める。
「ん、ふっ……ぁっ」
「鼻で呼吸しろ」
「…っ、ご、ごめんね、なれなくて…」
「いい」
「……わ、若利くん、私………」
泣きそうな彼女の後頭部を抑え、否定を聞かないようにする。
「んんっ、あっ、……ね、言わせて……」
「聞かない」
「…やぁ……」
舌を絡ませると、涙が睫毛に絡んで溢れる。
大粒で、花火を反射している。
まるで真珠のようで、昔読んだ人魚の伝承を思い出す。
それは彼女のことを呼んだのではないかとすら思える。
「……」
「……っ、若利くん」
そっとベンチに押し倒し、角度を変えてその唇を貪る。
帯を緩め、前を広げると、更に痩せた細い身体が見えた。
なんとなく直視出来ず、布を着せたまま、割れ目から手を入れ、直接その肌に触れる。
どこかひんやりしていて、暑さを少し和らげてくれる。
「ひぅ…、あ、あぁ…」
抑えられても尚溢れていく声が、どろっとした欲に変わっていった。
「…ああっ、ねぇ、んぅぅ」
隙あらば言おうとしてくる唇を、キスで塞いでは甘い声を紡がせる。
肌が熱くなってきた。
太腿に触れると、垂れてきた蜜が指に絡まる。
「やあ……ご、ごめんね、はしたなくて……っ!
触ってもらえるの、嬉しくて…っ」
「…っ!」
こんな、こんな一言で、簡単に自分の中の糸が切れる。
首や鎖骨を強く吸うと、真っ白な肌にはいとも簡単に痕がつく。
「きゃぅ、わ、わかとし、くんっ……!」
「……壊してしまいそうだ…」
「…っ、若利くんなら、いいよ……」
はしたなくも誰もいない屋外で、お互いの存在がないることを確認しながらまぐわう。
湿り気を帯びた空気がより一層香る。
慣らさなくても溢れてくる花にあてがい、緩やかに侵入した。
ずっと飢えていた肉欲が満たされる。