• テキストサイズ

御伽アンダンテ【HQ】【裏】

第9章 白露に吹きし風


「…凄く、凄く、綺麗だね…」
「また来年も見よう、ここで」
「…………」
「音がうるさくて、お前の声なんてすぐ消えるな」
「…牛島くん……」
「来年も、見よう。ここで。」
口調を強く、声も大きく言う。
「……牛島くん…」
「約束だからな」
色んな光に照らされるの表情が歪む。
俺はそれを、絶対に見ないふりをする。
「来年は、もっと近くで見てもいい。
川沿いだ。火薬のにおいがする。
大きくて、迫力がある」
「……っ」
「それも、また、良い」
声が震えそうになるのを堪えた。
それでも、肯定の返事をしてこない彼女を待つ。
佳境に入り、一気に空に花が咲く。
それでも彼女は、返事をしてこない。
繋いだ手をよりいっそう強く握る。
「……」
「ほら、聞こえないぞ」
「牛島くん……」
「名前で呼べ」
「わ、若利く、……ん」
いつまでも返事がない口に噛み付く。
こういう、深いキスはいつぶりだろうか。
/ 85ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp