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御伽アンダンテ【HQ】【裏】

第6章 水没した夢幻城


「で?何よ」
インターホンでの第一声である。
「あの、お家が…雨漏りで…住めなくなっちゃって…その…」
「ねえ、私、貴方に家賃も出したくないし家にも入れたくないの。
知ってるでしょ?」
「……う、はい……」
「こっちで解約しとくから 」
「…え、私は、どこに…」
「後ろの男と適当に暮らせば?
せいぜいそのボロい身体で稼ぎなさい」
ぶつっと大袈裟に通信が切れる。
あんまりだ。
らしくもなく、額に手を覆う。
「本当に、あの人がお前を産んだのか?」
「書類上は…そうなってるんだけどね…」
は既に諦めきっているような、やはりか、と受け入れているような顔をした。
ショックを受けない方がショックだ、というなんとも言い難い感情になる。
「のお父さんは…」
「うーん…」
と唸って、諦めたように公園に聳える公衆電話へ向かった。
慌てて隣に駆けつけ、音を聞いた。
「で?いくらいるんだね?」
通話しての第一声である。
「あの、住んでるお家が…」
「お前にやる土地はない」
「と、土地まではいらないんだけど……」
「はっ、あの女の子供だ、せいぜい身体で稼いだ方が早いぞ」
ぶつっとまた大袈裟に通話が切られる。
…あんまりだ。
頭が痛くなってまた手で額を抑える。
「……引っ越し費用くらい、借りればよかったかな…」
「もういい、関わるな」
繊細なその手首を掴んで、ずっと昨日から思っていたことを口にする。
「俺の家でいいだろ?」
時が止まったかのように固まる。
二人で見つめ合い、こちらの真剣さを伝える。
「だ、だめだよぉ!!」
にしては珍しく大声だった。
突然の事にびくっと肩が揺れる。
「だって、私、部活の邪魔になっちゃうし、受験生だし…… だめ!」
「だめじゃない」
「だ、だめだよ…!」
「、家族って言うのは、我が儘をもっとぶつけていいんだ。
俺も今日そうする。
食事はどうするんだ?寝るところもないんだぞ?
そんな身体では1日も持たない」
「うっ……でも、もう…」
「俺と生きるんだろう?」
「…っ!!」
はっとした顔をされ、瞳が一瞬揺れる。
瑞々しい空気によく合う、潤んだ瞳だった。

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