第6章 水没した夢幻城
親に事情を説明すると、俺の部屋に布団が用意された。
気まずいことこの上ない。
風呂に行くよう説得し、ほかほかしている状態で戻ってきたのがついさっき。
これでやっと安心できる。
そして、二人して腹が鳴る。
「飯、食い損ねた」
「そう、だね…」
うちの台所を覗くと、夕食が少し残っていた。
皿にうつして部屋へと運ぶ。
「美味しい…お母さんの味だ…」
懐かしそうに、はそれを丁寧に、綺麗に食す。
まるで神聖な儀式のようなそれを、静かに眺めていた。
そして、食べ終わると、潤んだ瞳からぽろぽろと外の雨のように涙が流れる。
それを邪魔してはならないと思った。
ただ、雨が止むのを待つように、その涙が止まるのをゆっくりと待った。
やがて二人で床に就く。
お互いの体温がわかるように隣で。
小さな身体に細い手足に、まるで陶器で出来たような顔立ち。
こんな可愛らしい少女を捨てて、両親は何をしているのか。