第4章 御伽草
次の日、はきちんと登校していた。
てっきり来てくれないかと思った。
「、おはよう」
そう声を掛けると、恥ずかしそうにする。
「お、おはよ……」
昨日は結局夜9時頃まで一緒にいた。
自分の腕の中で寝息が聞こえるのを確認すると、埃っぽく汚れた布団に入れてやり、そっと部屋を後にした。
「昨日、ありがとう……」
またしても消え入りそうな声で礼を言われる。
「俺がそうしたかっただけだ」
そう言うと、恥ずかしそうにする。
華奢で壊れそうな身体を抱き締め、家に着いても、まだそうしている錯覚さえした。
「牛島くん…、仲良くしてくれて、ありがとう……」
「ああ、こちらこそ」
「部活終わってからだが、送ってく。
だから、体育館で待っててくれないか?」
「お、怒られない?」
「ああ」
なるべく、長く一緒にいる時間を作りたくて切り出した。
は小さく頷くと、自信なさげに俯いた。
以来、大体の時間をにも費やすようになった。
昼も共に取り、帰りは見送り、朝練がない日は迎えにも行った。
少し迷惑か聞いてみたが、嬉しい、とだけ返ってきた。
自分らしくもなく、かなり浮かれた。
は週2日は病院に通っているが、あとは自宅と学校を往復しているだけだった。
一応保護者らしき人に生活費を仕送りされているが、ほとんど自力でなんとかしていた。
ただ、その身体では、バイトなんぞは到底無理なようで、細々と節約して生活しているらしい。
部活終わりに送ると、たまに夕食を食べさせて貰えたが、どれも絶品だった。
「料理は、好きなのか?」
「…う、うん、近所のおじさんが、売れない野菜、少しくれるから……お金かからない趣味かも…」
米や味噌なんかも、近所の農家が少し分けてくれるらしく、気に掛けてくれる人がいるのは唯一の俺の安心した場面だった。
ゴールデンウィークが始まる時、にテスト勉強をしないか聞いてみた。
さすがに部活も休みになる祝日、1日くらいは顔を見たいと思った。
「いいよ…」
と小さな声で約束が出来た。