第1章 俺の執事
蓮(れん)side
「蓮様、朝です。早く起きないと遅刻しますよ。」
カーテンがシャっと開き、太陽の光が顔を照らす。
まだ眠い。
瞼を開けるのが重く、布団に潜りもう1度眠りに着こうと目を固く閉じる。
「……蓮様、早く起きてください。」
低く落ち着いた声がさっきよりもはっきりと聞こえる。
「……いい加減に……」
被っている布団を掴み、思いっきり剥ぎ取られた。
「してください。」
「うおっ!?」
ドシーン!
その勢いでベッドから転げ落ちた。
「いって……お前俺は仮にも主人だぞ!?」
「そうですね。ですが、朝、学校に遅れないように起こせと申したのは蓮様です。私はその命令に従ってるだけですが……」
「……起こし方もう少し考えろよ。」
「こうでもしないと起きないでしょう?」
この男は執事の櫻木郁翔(いくと)。
主人の俺に対して容赦ない。
素直に意見を述べてくる。
ムカつく所がたまに……いや、結構あるが優秀な執事で両親も気に入っている。
そして、俺はこの執事に5年間片思い中だ。
初めは一目惚れだった。
俺が小学生の時、
「私の人生をあなたに捧げます」
と言ってきた。
初めは両親も驚いて追い返そうとしていた。
それを一目惚れしてしまった俺は両親を押し切ってコイツを執事として迎え入れた。
郁翔は思ってた以上に優秀で全員が驚いた。
一目惚れだったのが今ではこいつの全てが好きになっていた。
そして、1番好きなのが……
「蓮様、朝食が冷えます。早く顔を洗って……ぷっ(笑)」
「な、なんだよ!?////」
「はは……寝癖が酷いですよ。後で直してあげます。」
この時々見せる笑顔だ。
普段はあまり笑わない。
だからか、この笑顔が凄く珍しく感じ特別な気分になる。
「まずは顔を洗ってきてください。着替えをご用意しておきます。」
「……おぉ……////」