第9章 MARIA
伝承と違う。
もし、このままオメガが飛び立っても、星が滅びるとは限らない。
オメガが羽を羽ばたかせる。まるで星の命を導くように飛び立つと、ライフストリームがそれに追従する。
しかしその全てがオメガと繋がっているわけではなかった。
ぷつん、ぷつんと糸が切れるようにライフストリームがオメガと離れ星へ還っていく。
オメガ内部から、シャロンがその祈りでオメガと繋がるライフストリームの流れを切断していた。
それは彼女がオメガ内部に残り、オメガと星の繋がりを断ち切ることで星に命を残そうという判断だった。
おそらく、星は死を免れた。
しかし、ヴィンセントは納得しなかった。
ゆっくりと飛び立って行くオメガの上空を先回りする。
「駄目だ、シャロン……。そちらを選ぶな。私には君が必要なのだ……。君の犠牲の上に成り立つ世界を私は愛せない」
ヴィンセントは、オメガの遥か上空から星を見下ろしたあと、オメガに向かい勢いよく下降するとそのウェポンの硬い殻を貫通し、内部で光の爆発を起こしその命を燃やした。
オメガが消え、空に飛び立とうとする無数のライフストリームの光も星へ還っていく。
残された仲間達が空を眺めるが、降り注ぐ光の他に、人の姿は見えなかった。
静まり返る夜空に、星々に紛れて命の粒が舞っている。
赤い光と、白い光が踊るようにゆらめきながら星へ還っていった。