第6章 Cube
シドが作戦決行の演説をし、ついに最終決戦が始まった。
ヴィンセントが準備に入る前、シェルクが彼を呼び止め携帯電話を手渡した。なんでも、シェルクと直接通信が出来るよう改良したものらしい。
側でリーブも感心したように携帯電話を覗き込んでいた。
できる限りのサポートをすると言うシェルクに、ヴィンセントが頼むと返答すると、彼女は戸惑い口籠って、それから取り繕うように言い訳をした。
「今まで命令される事しか無かったので、頼む、というのは……」
戸惑いを見せてはいるものの嫌な様子ではなかったので、リーブはならばと思い立ち彼女に提案した。
「ではついでに、艦内の守備も頼んでしまいましょうかね?」
リーブは笑顔でシェルクに頼み事をすると返事を待たずに颯爽と持ち場へ向かって行ってしまった。
逃げるタイミングを失ったヴィンセントはリーブの後ろ姿を見送ったあと、黙ってシェルクに頷いて、部屋を後にした。
それは無言の⦅頼む⦆だった。
「なんで私が……」
シェルクは一人ぼやいてみるが、心の中に温かな感情が流れていることに気付き、もしかすると自分もお人好しの部類に入るのではと思えば悪い気はしなかった。
「なれるのでしょうか、私が……」