第1章 Summer #1
side Kazunari
「これ絶対似合うから!着てみなよ!ほらほら〜」
そう、友達であろう人物に言われている子。
決して派手ではなく、オレのトモダチにはあんまりいない感じの。
純粋に、"可愛い"と思ったのがオレの本心だろう。
変に見たら怪しいし、かと言って目に入らないようにするにも難しい。自分も試着室へ入ってしまおうと思った。
「ど、どうかな……やっぱ似合わないよね、!」
オレに向かって話してる…?
いや、違う。目を瞑ってる。
友達が前にいると思ってるんだろうな、可愛い。
『えっと…オレ、じゃないよね?』
もうちょい気遣った言葉にすればよかったと少し後悔した。
「ごごご、ご、ごめんなさい、!」
彼女激しく謝っているので、
『そんなに謝らなくても!?!』
と、返しておいた。
……沈黙が痛い。
『似合ってると思うよん!』
気付けば、そう口に出していた。
彼女は、「ありがとうございます」と言って笑った。
今思えば、この時にはもう恋に落ちていたように思う。
少ししてから彼女の友達が来た。
オレは誰か、と問うので(当たり前だけど)
『あ、オレ三好一成!いや〜、たまたま試着室の前を通りかかった時にこの子が出てきて、つい見とれちゃったんだよね〜。
ゴメンね、じゃあオレ行くね!』
と、必死に取り繕った。
ここで最大のミスだ。いつもは口を開けば
『連絡先交換しよ!』
などと言うところであるのに、
本当に聞きたい相手に対して聞きそびれた。
頭の片隅に彼女がいるまま、
諦めなければいけないと思っていた時、
もう一度会えるなんて、思ってもみなかった。