• テキストサイズ

【短編集】My Favorite【R18】

第7章 女王様は(彼目線)


(…最高の名誉、か……。)

怒りで顔を真っ赤にして叫んだ女王様の言葉が、親友の言葉と重なる。

雄の蜂は働かない。

女王蜂と交尾をするためだけに生まれ、朽ち果てる。
交尾できなかった雄は巣から追い出され、これまた朽ち果てる。

そうなれば、女王蜂と交尾できた者は使命を全うした勇者であり、最高の名誉に値する…

(あいつもよく言ってたな…同胞のために命をかけるのが役目だって…)

なら、役目を果たせなかった彼は何のために死んだのか。

(無念だよな…)

あれから数時間が経ったが、俺は女王様の部屋に行く気はない。
『今晩私の部屋に来なさい』という女王様の命令を忘れた訳ではない。

だけど…俺には俺の優先順位がある。

知らぬ間に、自然と足が赴いたのは親友を見送った窓。
瞬く無数の星に誘われて衝動的に翅を広げ、夜空の下へ飛び立った。

(絶対に見つけてやるから…)

交尾を終えた雄は、残りの体力を振り絞って死に場所を探す。
巣の中で死ぬことは許されていないからだ。

皆に迷惑がかかるのなんの…
そんな理由でひっそりと死ななければならない。

彼の様子を思い出してみる限り、あの状態ではきっと遠くへは飛べなかったはずだ。
俺は彼を探す旅に出て、休まずあちこちに視線を張り巡らせた。

木の枝に翅が引っかかり、傷が入って飛びにくくなっても…俺は巣の周辺をずっと探索し続けた。

/ 88ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp